企業インタビュー(日揮株式会社(JGC))

平成29年2月19日

第5回:木村蔵人氏 日揮株式会社(JGC) クリーン燃料製油所改修 プロジェクト(CFP)アドミニストレーション・マネージャー

(ECA)最近クウェートでは様々なインフラプロジェクトが始動しています。そのような中で御社は、日本との関係で切っても切れない石油部門でプロジェクトに参加されているわけですが、先ずは現在参加中のプロジェクトの概要を教えていただけますか?
(木村氏)今現在実施中のプロジェクトは、クウェート国営石油会社(KNPC)が当国中部地域・アハマディ地区で操業中の三つの既存製油所を改造し、欧州規格に対応した低環境負荷燃料生産を主目的とした統合型製油所にアップグレードするものです。プロジェクト全体では規模が非常に大型であることから、三つのパッケージに分割して入札が実施され、当社はJGSKとして韓国のエンジニアリング企業であるGSおよびSKとジョイントベンチャーを組み、ミナ・アハマディ(MAA)パッケージを2014年に受注、2018年以降に竣工の見込みです。なお、現在稼働している既設の製油所は1980年台に当社が建設したものであり、当社にとっての本プロジェクトは、自らが30年前に建設したプラントに関連する業務を再び行うという、とても感慨深いプロジェクトでもあります。

(ECA)木村さんは、本プロジェクトのアドミニストレーション・マネージャーという肩書きですが、プロジェクトを予定通り進めるための縁の下の力持ちという役割ですよね。規模が大きく5年程の長期に渡るプロジェクトにおいて、様々な調整や組織管理の点で責任者として大変な面も多いのではないでしょうか。

(木村氏)本プロジェクトの当社関係者は、日本人・外国人合わせて350名の規模になった中、査証手配を含む雇用等「人事」や「給与厚生」、「総務」といった建設作業以外の「何でも屋」を任されていますので、大変だと思うところは多くあります。例えば移動のための車は約70台保有しており、その管理や手配に加え、駐在者が寝泊まりする宿舎や食事の手配など、プロジェクトの円滑な遂行のためにはどれも手を抜けない緊張感が必要な業務です。査証関連では、昨日まで不要だった手続きが何の事前通告も無く追加されたり、役所の担当官によって言うことが違ったりと、制度や社会システムに係るルールが整備されていないので、担当官個人の裁量に振り回されています。また、ジョイントベンチャーリーダーとして韓国のGSやSKとの調整やスポンサー企業との折衝、外国人の当社関係者とのコミュニケーションにおいては、相手の話を最後まで聞く日本の常識的な対応では通用しないなど、コミュニケーションの取り方にも当初苦労しました。
(ECA)それはお疲れ様です。ところで木村さんはメーカーから転職され、中途社員として日揮に入られてから3年後に人生初めての海外駐在ということですが、クウェート勤務が決まった時と駐在1年半が経った今では心境の変化はありますか?

(木村氏)正直なところ、上司からクウェート勤務を告げられることは全く予想していませんでした。2014年当時に当社が実施中の米国や東南アジアのプロジェクトに参加するとばかり思っていたからです。それまで仕事でもプライベートでも中東に縁が無かったため、中東の現場と言えば「砂漠」、「猛暑」、故に「過酷」といった単語が常に頭の中を占めるなど硬直的なイメージを抱いていました。そのため、相当な覚悟を決めて2015年4月に駐在業務をスタートさせましたが、現実には現場の環境が過酷というよりも、他の国での現場のやり方が通用しないといった点で労力が必要でした。一例として、多くのプラント建設現場は市街地から離れた場所にあるため、「キャンプ」という施設を設置して、宿舎、調理設備、レクレーション機能等も我々で設営しますが、クウェートでは建設現場自体が町の近くに位置している事や、キャンプ設営のための敷地が確保できなかった事もあり、宿舎は現場から近い町にマンション一棟借り上げています。それにより、他現場では可能であった「宿舎内への厨房設備の設営」ができず、駐在員への食事の提供方法などで頭を悩ませました。生活の面に関しては思っていたよりも都会的な暮らしが可能で、自分たちの宿舎の周りにファストフード店がいくつもあり、コンビニの様な雑貨店も徒歩圏内にあり、レストランモールもスターバックスもありで、駐在前に想像していたイメージとは大きく違っていました。娯楽施設の少なさは想像通りでしたが。

(ECA)プロジェクトの現場勤務では私生活を充実させるのは難しいと思いますが、1年半以上経過した今、クウェート生活を振り返ってみて、特異な点とかありますか?

(木村氏)意外だったのが「親日家が多い事」です。特に日本人や日本文化に対する興味は思っていた以上で、例えば「日本のアニメフェア」が開催されたり、スーパーで日本のお菓子コーナーがあったりもします。クウェートの女性の間では今は「抹茶」が日本の人気のようです。治安については、私が来てからモスクでのテロ事件という大きな騒ぎが1度だけありましたが、治安上「危ない国」という印象は持っていません。一方で、車の運転マナーはとても悪い国と感じています。高速道路でウィンカー無しの急な割り込み、急ブレーキ、携帯電話を使用しながら猛スピードでの運転等、日本では滅多に見かけない光景を日常的に目にします。

(ECA)御社関係者、特に日本人の駐在スタッフがクウェート生活を満喫しつつ、プロジェクトが順調に進むことを期待しています。本日はありがとうございました。