企業インタビュー(Shamal Az-Zour Al-Oula K.S.C.)
平成28年9月19日
第4回 夏目友美氏 Shamal Az-Zour Al-Oula K.S.C. Contract Manager (住友商事(株)より出向)

(ECA) 中東に女性一人単身で赴任し、しかも新しいプラント建設を伴う電力・水ビジネスに携わる仕事で、さらに事業会社に出向というのは、非常にレアなケースでは無いでしょうか。今回のクウェート赴任は、ご自身にとっては意外ではありませんでしたか。
(夏目氏) 仕事の内容から見れば今回の出向・駐在は決して不自然なものではありません。2008年に住友商事に入社して以降一貫して電力ビジネスに携わっていますし、2015年3月の赴任の前も東京でクウェートの発電・造水事業を2013年7月から担当していました。
(ECA) 外から見ると発電・造水プラントの建設工事は終えているように見えます(※2016年9月現在)が、プロジェクトの進捗状況はいかがでしょうか。これまでの経緯も含めてご紹介いただけますか。
(夏目氏) このプロジェクト、アル・ズール・ノース発電・造水 (Independent Water Power Producer: IWPP) 事業のフェーズ1は、住友商事を含むコンソーシアムが落札し、クウェート政府との契約調印は2013年の年末に行われました。その後すぐに土木工事が始まり、今ようやくプラント建設は終わりつつあります。本年(2016年)11月末に竣工し、契約スケジュール通り商業運転を開始できる見込みです。
(ECA) 色々な事が遅れがちな中東で、予定通りというのは素晴らしいですね。本プロジェクトを担うシャマル・アズール社のマネジメント力の高さが窺えます。ところで同社での夏目さんの役割を教えて下さい。
(夏目氏) 我々が携わっているIWPP事業では、電気・水の供給先である電力水省やプロジェクト資金の借入先である銀行団、また、建設工事を行っているEPC(Engineering, Procurement and Construction)業者等様々な関係先とそれぞれ契約を締結して事業を進めて行きますが、その契約管理が私の主な仕事です。その他にも事業会社運営に関連する業務などを幅広く担当しています。
(夏目氏) 仕事の内容から見れば今回の出向・駐在は決して不自然なものではありません。2008年に住友商事に入社して以降一貫して電力ビジネスに携わっていますし、2015年3月の赴任の前も東京でクウェートの発電・造水事業を2013年7月から担当していました。
(ECA) 外から見ると発電・造水プラントの建設工事は終えているように見えます(※2016年9月現在)が、プロジェクトの進捗状況はいかがでしょうか。これまでの経緯も含めてご紹介いただけますか。
(夏目氏) このプロジェクト、アル・ズール・ノース発電・造水 (Independent Water Power Producer: IWPP) 事業のフェーズ1は、住友商事を含むコンソーシアムが落札し、クウェート政府との契約調印は2013年の年末に行われました。その後すぐに土木工事が始まり、今ようやくプラント建設は終わりつつあります。本年(2016年)11月末に竣工し、契約スケジュール通り商業運転を開始できる見込みです。
(ECA) 色々な事が遅れがちな中東で、予定通りというのは素晴らしいですね。本プロジェクトを担うシャマル・アズール社のマネジメント力の高さが窺えます。ところで同社での夏目さんの役割を教えて下さい。
(夏目氏) 我々が携わっているIWPP事業では、電気・水の供給先である電力水省やプロジェクト資金の借入先である銀行団、また、建設工事を行っているEPC(Engineering, Procurement and Construction)業者等様々な関係先とそれぞれ契約を締結して事業を進めて行きますが、その契約管理が私の主な仕事です。その他にも事業会社運営に関連する業務などを幅広く担当しています。

(ECA) 会社で唯一の日本人として夏目さんが孤軍奮闘する姿が想像できます。シャマル・アズール社は、クウェートで初めての民間IWPPというチャレンジャーですから、ご苦労も多いのでは無いでしょうか。
(夏目氏) 何事にも時間がかかるというのがこの国でビジネスを行う上で苦労する点だと思います。政府機関の手続きでは確立されたルールが存在しない(もしくは存在していても厳密に適用されていない)ことがよく見受けられます。聞く相手によって言っていることが変わるため、最終段階でいきなり振り出しに戻ったり、数週間前にできた手続きが無効になっていて別の方法を指示されたりなど、計画的に物事を進めようとしても思うように進まないのが現実です。
(夏目氏) 何事にも時間がかかるというのがこの国でビジネスを行う上で苦労する点だと思います。政府機関の手続きでは確立されたルールが存在しない(もしくは存在していても厳密に適用されていない)ことがよく見受けられます。聞く相手によって言っていることが変わるため、最終段階でいきなり振り出しに戻ったり、数週間前にできた手続きが無効になっていて別の方法を指示されたりなど、計画的に物事を進めようとしても思うように進まないのが現実です。

また、このプロジェクトはクウェートで初めてのPPP(Public Private Partnership)型案件ということで、何をするにも前例が無いというのが一番苦労している点かもしれません。法制度という大枠は整備されていたり、PPPとは別のスキームでの前例があったりはしますが、詳細な手続きが決まっていなかったり、別スキームで適用しているものをそのまま使うのが難しいなどといった理由で、関係政府機関と一緒になって一から作り上げていく必要があります。
フロントランナー故に時間と労力がかかっていますが、別の見方をすれば先駆者としての醍醐味でもあります。本件を担当し始めた数年前と比べても、我々の様な外資の受け入れ環境は急速に整ってきていると感じていますので、PPP型案件のみならず民間外資企業の進出が今後はよりスムーズになっていくのではないかと感じています。
(ECA) イスラム教の社会において、女性であることで仕事がやりづらいという事はありませんか。
(夏目氏) 3年前初めて当地に出張で来た時に体験したことですが、面談相手の男性に挨拶する際に他の国でやるのと同じように握手を求めたところ、自分から握手を求めるのは控えた方がよいというアドバイスをもらったことがあります。クウェートは他と比べても厳格なイスラム国家ですので、その慣習を理解した上で行動する必要があるということを再認識した出来事でした。最近では挨拶をした後の一瞬の目の動きで、この人は握手をしても大丈夫かどうか見分けることが出来るようになってきました。
また、クウェート特有の文化でディワニヤと呼ばれる寄合の様なものがあり、夜になると男性たちが集まってビジネスや政治の話からスポーツの話まで様々な情報交換が行われているようです。特にラマダン中のディワニヤは関係構築のためには非常に重要で、地元有力者のディワニヤの周りはゲストの車で渋滞が起きるくらいだと聞いています。ディワニヤは男性の社交場ですので、私自身は基本的には参加することができませんが、一度だけクウェートローカルのビジネスパートナーのディワニヤにお邪魔したことがあり、その豪華さに感動しました。
フロントランナー故に時間と労力がかかっていますが、別の見方をすれば先駆者としての醍醐味でもあります。本件を担当し始めた数年前と比べても、我々の様な外資の受け入れ環境は急速に整ってきていると感じていますので、PPP型案件のみならず民間外資企業の進出が今後はよりスムーズになっていくのではないかと感じています。
(ECA) イスラム教の社会において、女性であることで仕事がやりづらいという事はありませんか。
(夏目氏) 3年前初めて当地に出張で来た時に体験したことですが、面談相手の男性に挨拶する際に他の国でやるのと同じように握手を求めたところ、自分から握手を求めるのは控えた方がよいというアドバイスをもらったことがあります。クウェートは他と比べても厳格なイスラム国家ですので、その慣習を理解した上で行動する必要があるということを再認識した出来事でした。最近では挨拶をした後の一瞬の目の動きで、この人は握手をしても大丈夫かどうか見分けることが出来るようになってきました。
また、クウェート特有の文化でディワニヤと呼ばれる寄合の様なものがあり、夜になると男性たちが集まってビジネスや政治の話からスポーツの話まで様々な情報交換が行われているようです。特にラマダン中のディワニヤは関係構築のためには非常に重要で、地元有力者のディワニヤの周りはゲストの車で渋滞が起きるくらいだと聞いています。ディワニヤは男性の社交場ですので、私自身は基本的には参加することができませんが、一度だけクウェートローカルのビジネスパートナーのディワニヤにお邪魔したことがあり、その豪華さに感動しました。

(ECA) ディワニヤに参加されたというのは凄いバイタリティーをお持ちですね。私が知る限り、クウェート人が主宰する男性ディワニヤに参加したことがある女性は夏目さんだけです。クウェート暮らしに積極果敢に挑んでいるように見受けられますが、実際の生活の上で特徴的なことはありませんか。
(夏目氏) 労働力を外国人に頼っているため、どこに行っても英語が通じるのが特徴的だと思います。私はアラビア語が一切話せませんが、それでもほぼ問題なく生活できています。治安の面では強盗・窃盗などといった犯罪は少ない印象です。日本とまでは行きませんが、ヨーロッパに比べて日常生活で身の危険を感じることはかなり少ないです。
普段の暮らしという点では、そこら中にショッピングモールがあり何でも手に入りますが、クウェート人の所得水準の高さが理由か、殆どのものを輸入に頼っているためか分かりませんが、とにかく物価が高いです。
ところで、今年の夏にクウェートで最高気温54℃を記録し、それが東半球の史上最高気温だと日本でもニュースになりました。50℃を超える世界はどんな感じなのか良く聞かれますが、クッキーを焼いた後のオーブンを開けてその中を進む感じ、と説明しています。そんな暑いクウェートで生活して気づいたことは、外気温が高すぎると水道管も温められるため蛇口から出てくる水が冷たくなくなる、ということです。旅行先などでシャワーのお湯が出ないというのは良く経験しますが、その心配がなくいつでも温かいシャワーが浴びられるのはこの国の良い点かもしれません。
(夏目氏) 労働力を外国人に頼っているため、どこに行っても英語が通じるのが特徴的だと思います。私はアラビア語が一切話せませんが、それでもほぼ問題なく生活できています。治安の面では強盗・窃盗などといった犯罪は少ない印象です。日本とまでは行きませんが、ヨーロッパに比べて日常生活で身の危険を感じることはかなり少ないです。
普段の暮らしという点では、そこら中にショッピングモールがあり何でも手に入りますが、クウェート人の所得水準の高さが理由か、殆どのものを輸入に頼っているためか分かりませんが、とにかく物価が高いです。
ところで、今年の夏にクウェートで最高気温54℃を記録し、それが東半球の史上最高気温だと日本でもニュースになりました。50℃を超える世界はどんな感じなのか良く聞かれますが、クッキーを焼いた後のオーブンを開けてその中を進む感じ、と説明しています。そんな暑いクウェートで生活して気づいたことは、外気温が高すぎると水道管も温められるため蛇口から出てくる水が冷たくなくなる、ということです。旅行先などでシャワーのお湯が出ないというのは良く経験しますが、その心配がなくいつでも温かいシャワーが浴びられるのはこの国の良い点かもしれません。

(ECA) 確かにいつでも温かいシャワーが浴びられるのは良い点ですが、野菜や果物をお湯で洗うことには少し抵抗感のある私です。
夏目さんには是非これからも日本人女性として、仕事と暮らしの両方で挑戦を続けていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。
夏目さんには是非これからも日本人女性として、仕事と暮らしの両方で挑戦を続けていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。